テキスト集 ❶   タイトルとあらすじ

 

まえがきにかえて  →戯れ歌「鬼若」 

 

プラスのページでは

野上豊一郎「解註 謡曲全集」(昭和10年)から、主題についての解説をご紹介。

能楽大家の揺るぎのない見解です。管理人注目のセリフと言葉も一つずつ。


  清経 kiyotune     →清経へ →清経プラスへ

 

秋の暮れ、平家の都落ちに同行せず独り残った妻のもとに、清経の家臣淡津三郎により清経入水の報告と遺髪がもたらされます。その夜、悲しみにくれる妻の夢枕に清経の亡霊が立ちます。しかし妻は夫が約束に反し自死したこと、夫は妻が形見の遺髪を手向け返したことを互いに恨み合うだけ。清経は一門の絶望的状況のなかで死を決意した事情や水の様子を妻に語って聞かせますが、修羅道に堕ちる刻限となり、地獄での苦しみを再現した後に去って行きます。最期の十念により清経成仏が示されます。 


■野宮  nonomiya     →野宮へ  →野宮プラスへ

 

晩秋、旅僧が野宮の旧跡を尋ねると、参拝の態で現れた女が、今日九月七日は光源氏が野宮に六条御息所を訪ねた日だと述べます。女は源氏と御息所の交情や、御息所が娘である斎宮と伊勢に下向したことを語り、自らを御息所と明かして姿を消します。夜になり旅僧が御息所を弔っていると、御息所の亡霊が車に乗って現れました。亡霊は賀茂の祭りでの車争いの屈辱を述べ、旅僧に妄執を晴らしてほしいと頼み、源氏の来訪を懐かしんで舞を舞います。再び車で出て行く御息所の亡霊は、はたして火宅を出て成仏したのでしょうか。


■ 善知鳥 utou     →善知鳥へ  →善知鳥プラスへ

 

初夏のこと、旅僧が陸奥外の浜への途次、立山で地獄の光景を見て下山すると、猟師の幽霊だと名のる老人が現れます。老人は外の浜の妻子に供養をするよう言伝を頼み、死んだ猟師である証拠に衣の片袖を渡します。外の浜に着いた旅僧が家を尋ね、妻が片袖を形見の衣に当てるとピタリと合い旅僧が弔いを始めると猟師の亡霊が現れますが、子の髪を撫でようにも近づくことができません。親鳥がウトウと呼べば子鳥がヤスカタと答える習性を利用し猟をした報いです。亡霊は猟の様子を再現し、地獄では自分が雉になり鷹となったウトウに追われて逃げる姿を見せ、最後は旅僧に助けを乞いながら消え去ります。


  定家 teika     →定家へ   →定家プラスへ

 

冬の初め、都千本で時雨を避けて宿りをしていた旅僧達は、現れた里女にそこが定家の建てた「時雨の亭」と教えられ、「定家葛」の這う式子内親王の墓へと案内されます。女は定家と内親王のつらい恋を語り、自分こそ内親王と名のり、妄執の苦しみを助け給えと願って姿を消します。夜になり、旅僧達が弔いをすると墓の中から声がして、やつれ果てた内親王の亡霊が現れます。亡霊は旅僧の法華経により葛がほどけて自由の身になり報恩の舞を舞うのですが、亡霊が墓の中に戻れば再び、墓石は定家葛に覆われてしまうのです。


  弱法師 yoroboshi     →弱法師へ  →弱法師プラスへ

 

河内国高安の通俊は、人の讒言により追い出した息子の二世安楽のため天王寺で施行をしています。きょう彼岸の中日が満願。従者がその旨を触れていると、盲目となり弱法師と呼ばれる俊徳丸が現れ、梅の花が袖に散りかかるのを機に施行を受けます。俊徳は仏の慈悲を讃え、天王寺の縁起を語り、西の海に沈む入日を拝み、自分は心眼で難波の景色が見えるのだと達観します。しかし盲目の悲しさ。歩けば人に行き当たり倒れる始末です。通俊は息子だと気付きますが人目のため夜更けてから名のり、恥じて逃げる俊徳丸をとらえ高安に連れ帰るのでした。


  通小町 kayoikomachi     →通小町へ →通小町プラスへ 

 

八瀬の山里で一夏を送る僧のもとへ、毎日木の実や小枝を持参する女がいます。女は、僧に木の実の名を尋ねられると「木の実尽くし」で答え、名は市原野に住む姥だと言い、自分の供養を願って姿を消します。女を小町と悟った僧は市原野に出向いて弔いをします。すると小町の亡霊が現れ受戒を望みますが、深草の少将の亡霊が追って出て戒を受けさせまいとします。僧は、懺悔のために二人に生前の所業である「百夜通い」を再現させ、最後に「飲酒戒」を守ったことにより少将・小町の成仏が叶います。


  実盛 sanemori     →実盛へ 実盛2へ →実盛プラスへ

 

里の男が登場し念仏を勤める遊行上人の独り言が不審であると述べます。上人にだけ念仏を聴聞する老人の姿が見え声をかけるのですが、名を尋ねても答えません。更に促されると人払いの上で実盛の霊であると明かし、弔いを頼んで池のほとりに姿を消します。夜になり上人が踊り念仏で実盛の供養をしていると、花やかな甲冑姿となった亡霊が現れ弥陀を讃仰、そのあと篠原の合戦には白髪を染めて挑んだが首を打たれたこと、故郷の戦いであるため錦の直垂れを付けたこと、大将と組めず無念の最期を遂げたことを語り、回向を願って消えて行きます。


■鵺 nue     →鵺へ  →鵺プラスへ

 

旅僧が熊野詣での帰りに摂津の国蘆屋の里に着きます。川崎の御堂に泊まりますが、土地の者の告げた通り異様な風体の舟人が空舟に乗って現れます。それは近衛の院の御代に源の頼政の矢にかかり死んだ鵺の亡魂でした。舟人は旅僧にその有様を語ると空舟に乗り波間に消えます。旅僧が弔いをしていると今度は鵺そのもの身体で姿を見せ、供養に感謝し、退治された後には頼政が名を上げたこと、自分は空舟に押し込められ淀川に流されたことを語ります。終わると暗黒の世界にある身を照らし給へと願い、鵺の亡魂は月影とともに海中に消えて行きます。


                       


 

| Home | Link | Text2 | Text3 | Text4 |

(C)2010 Yukie, All Rights Reserved.

 

 

inserted by FC2 system